(2005年5月16日更新)
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[ホルモン療法] のキーワード
<子宮内膜症と子宮腺筋症のホルモン療法>

(1)偽妊娠療法

(2)ダナゾール療法

(3)GnRHアゴニスト療法


(1)スプレキュア
(2)ナサニール
(3)リュープリン
(4)ゾラデックス
<子宮筋腫のホルモン療法>

GnRHアゴニスト(アナログ)療法
<逃げ込み療法>について

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[ホルモン療法]

筋腫も内膜症も、薬物では根治できません。薬は、自分にとっての「目的」を考えてから、それに合った方法を選ぶ必要があります。一般に使われている薬の種類には
(a)いわゆる対症療法としての薬(鎮痛剤、造血剤、止血剤など)のほかに、
(b)ホルモン薬、
(c)漢方薬があります。

(a)は目的がはっきりしていますが、問題は(b)、(c)で、目的がよくわからないまま漠然と、使用しようかやめようかと迷う人もいるようです。しかし、たとえていうなら「闇夜に鉄砲でも、どこかにあたるだろう」というような考えで薬を選択するのは、危険です。(b)や(c)は、その特徴を知り、自分の状態や希望、考えに合うかどうか、よく検討してから効果的に使いたいものです。
なお、薬というものは、専門家のあいだでも評価が分かれ、医療機関によって違う説明がなされることがよくあるので、そのことへの留意も必要です。
以下、子宮内膜症および子宮腺筋症の場合子宮筋腫の場合に分けて説明します。また、最後に、逃げ込み療法としてホルモン療法を選択する際に参考となる情報をご紹介します。

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<子宮内膜症と子宮腺筋症のホルモン療法>

卵巣機能を抑えて月経をとめる薬です。色々な種類がありますが、作用によって大別すると3通りあります。
(1)偽妊娠療法、
(2)ダナゾール療法、
(3)GnRHアゴニスト療法の3つです。
(2)と(3)を総称して偽閉経療法という呼び方もあります。

使用中は、下腹部痛や貧血など、月経にまつわる辛い症状を一時的に改善することはでき、病変部の縮小も見られます。ただし、(2)と(3)は長期に継続して使えない、いわば「緊急避難」的な方法で、最長6カ月の使用を終了したのちは、症状、病巣の状態とも元に戻ることが多いことから、漢方療法や生活改善を行なって病巣の再燃を防ぐ努力が必要です。副作用も少なくないので、もともとの症状がそれほど苦痛でない、たとえば月経中だけ通常量の鎮痛剤を使えばふつうの生活が送れるくらいの人にとっては、利点の少ない方法です。

なお、ダナゾールもGnRHアゴニストも子宮内膜症の薬として認可されていますが、子宮腺筋症の治療や症状の改善を「効能・効果」として挙げている薬剤はありません。腺筋症も内膜症と同様、子宮内膜組織の増殖によってもたらされる病気であることから、全摘手術を避ける目的で、ホルモン療法を行なうことがよくあります。しかし、腺筋症の病変は内膜症の病変と組織のタイプが異なるためにホルモン薬に対する反応が鈍く、内膜症に比べると治療効果に期待ができません。偽閉経療法では、月経を止めることから、過多月経や貧血の改善は望めますが、効果はやはり一時的です。

上記のような「症状対策」としての使い方のほかに、手術前や後に、病変部の縮小、貧血の改善、術中の出血量の抑制、術後の再燃の予防といった目的で使われることもよくあります。しかし、その効果に対する評価は医師によって異なるようです。その治療をした場合としなかった場合のメリット、デメリットの確認が必要です。

使用期間ですが、目的の1つである手術前後の「病変部縮小」のためには、最低3カ月、標準的には4カ月の使用で十分で、もう1つの目的である「症状緩和」のために、希望があれば6ヶ月(ダナゾールの場合は4ヶ月)までは継続使用できます。(中には、1日の使用量を減らしてもう少し長期に使っている人もいます。)使い始めから使い終わりまでの数カ月を1クールと呼びます。1クールを終えた後、病巣の再燃が認められて、再度の使用を希望する場合、半年程度の休み期間を必要とします。これは、ホルモン薬で卵巣機能を抑えると骨量減少の副作用が起きるので、いったん骨量を回復させる必要があるためです。休み期間を設けずに継続してホルモン薬を使用することは危険です。

ホルモン薬の使用中は内膜症の症状は楽になるものの、副作用が出ることもままありますので、その損得をよく考える必要もあるでしょう。詳しくお知りになりたいかたは、薬の添付文書(=製薬メーカーが薬につけて医療機関に渡している説明書)を医師や薬剤師に依頼して入手してください(インターネットで入手することも可能です。「医薬品医療機器情報提供ホームページ」http://www.info.pmda.go.jp/をご覧ください)。なお、添付文書に説明されている副作用の中には、薬の発売時には公表されていなかった副作用が、数年後に認定され追記されたものもあり、また今後も増える可能性もないとはいえません。それくらい、使用者の訴える副作用は多様ですが、その一方で全く副作用を感じない人もいます。

病気による症状が強い人の場合は、繰返しの使用を検討することもありますが、そのつど薬のメリット(使用によって得られる効果)とデメリット(副作用)を比較しながら選んでいく必要があります。

治療法の検討にあたっては、今の自分の年齢と今後の人生設計を考慮しましょう。たとえば、閉経年齢(平均51歳)に近いかたの場合は、「逃げ込み療法」といって、ホルモン療法を数クール続けるうちに本物の閉経にもちこむ、というやり方もあります。しかし、まだ閉経まで間があって、手術による根治療法を選択しない場合は、かなり長期にわたって薬物で、症状をコントロールしていかなくてはなりません。また50歳近くても閉経には個人差があるので、必ずしも「あと2クールくらいで閉経する」と予測することはできません。そう考えると、ホルモン薬だけでなく、なるべく漢方療法や生活療法も取り入れ、自分の人生設計にあわせて、その時々にあった治療法を選んでいくとよいでしょう。どんな状況のかたにも当てはまる「スタンダードなやり方」はないので、「自分には、どういう選択が一番よいか」という熟慮が必要です。

以下に、3通りのホルモン薬について簡単な説明をします。
(1)偽妊娠療法

妊娠中は排卵が起こらないため子宮内膜症の病巣が縮小することが知られています。そこで、避妊薬(ピル)としても用いられるエストロゲンとプロゲステロンの合剤を飲んで、人工的に妊娠しているときと同じ状態を作り出して症状の改善をはかろう、というのが偽妊娠療法です。重篤な副作用としては血液凝固や肝機能障害などがあり、タバコを吸う人や35歳以上の人がピルを飲むと血栓症や心筋梗塞のリスクが高くなります。また、不正出血や吐き気、気分の変動といった症状がでることもあります。この治療には(エストロゲンの含有量が多い)中用量ピルと低用量ピルの両方が使われますが、低用量ピルのほうが副作用が出にくいとされています。しかし、中用量ピルは、もともと内膜症や月経困難症の治療薬として認可されていましたから保険の適応になりますが、低用量ピルは避妊を目的として健康な人が飲むものとして認可されたので、保険の適応になりません。

症状緩和の効果はさほど劇的ではないのですが、次に紹介する偽閉経療法のように骨量の減少を引きおこしたりしないので、長期間連続して使うことができます。10〜20代にかけての若い女性の場合、偽閉経療法だけで閉経まで持ち込むことはできませんから、この治療法が有効です。

なお、日本産科婦人科学会など6団体がまとめた低用量ピルの使用に関するガイドラインによると、子宮筋腫を持っている人はピルを使ってはいけないことになっていますが、低用量ピルで筋腫が増大したり、症状が悪化するという証拠はなく、ピル使用の歴史が長い諸外国でも筋腫を持っている場合の使用を禁じているところはありません。ただ、ピルで筋腫を小さくすることはできません(中高用量のピルでは筋腫が増大したという報告もあります)から、大きな筋腫が原因となっている症状(過多月経や腹部圧迫感や頻尿など)の改善をピルに期待することはできません。筋腫は大したことがなくて、あくまでも内膜症の症状の改善ということでピルを使うのであれば、筋腫の状態を慎重に観察しながら使用することは考えられると思います。(詳しくは『たんぽぽ通信』34〜37号の特集「低用量ピルって何?」か、「ピルと筋腫の関係について知ろう」をご覧ください)。

(2)ダナゾール療法

ダナゾールは薬品としての一般名。代表的な商品名は「ボンゾール」で、臨床ではこちらの名で説明されることが少なくありません。脳から出される2種類の性腺刺激ホルモン(主に黄体化ホルモン)を抑えることでエストロゲンを抑制し、排卵と月経をとめます。またダナゾールには、直接、病巣を萎縮させる働きもあり、また、免疫機能を改善する作用もあります。錠剤タイプとカプセルタイプがあります。 毛深くなる、にきびが出る、声が低くなる、体重が増えるといった副作用があります。さらに、重篤な副作用としては肝機能障害や血栓症を起こすことがあり、もともと肝臓や血管に病気のある人は使えません。病気のない人も、定期的な血液検査が必要です。その他、肩こり、脱力感、便秘、筋肉痛、胃部不快感、頭痛、しびれ、関節痛、むくみなどの副作用が報告されています。ですから、使用前に血液凝固系の検査をし、定期的に肝機能検査を行なうことが望ましいでしょう。

値段は、使用量により違いますが、ボンゾールの場合1ヵ月分で1万7千円〜3万2千円くらいです (薬の特許が切れた後に同じ有効成分の薬を他の製薬会社が製造して販売する「後発品」はもっと安い) 。ただし、実際に支払う金額は、保険加入者本人であるか家族であるかによって異なります(これは他の薬も同様です)。なお、ここに記載した薬価は2002年秋時点での数字です(薬価はほぼ毎年改訂されています)。

なお、内服することで肝臓に負担がかかるのを避けるために、腟座薬やIUDに作り変えて腟や子宮に挿入したり、腹腔鏡下に内容物を吸いだした後のチョコレート嚢腫にダナゾール液を注入したりして、薬を直接病巣に作用させるような治療法も研究されています(ダナゾール直接療法)。

(3)GnRHアゴニスト(GnRHアナログ)療法

「スプレキュア」「ナサニール」、「リュープリン」「ゾラデックス」(いずれも商品名)として知られるこの療法は、薬の仕組みはどれも同じです。GnRHとは脳下垂体を刺激する性腺刺激ホルモン放出ホルモンのこと、アゴニストあるいはアナログはそれと同じ作用をする物質、という意味です。この薬を使うと、下垂体の機能が抑えられ、性腺刺激ホルモンが分泌されなくなります。卵巣への刺激がストップするためにエストロゲンが低下し、閉経と似た状態になり、内膜症病巣の活動や増殖が抑えられる、という仕組みです。本来GnRHアゴニストは下垂体に性腺刺激ホルモンを放出させるものですが、連続使用で刺激を与え続けていると下垂体の感受性が低下していきます。ですから、使い始めは刺激を受けた下垂体が性腺刺激ホルモンをよく出して、不正出血を起こすこともあります(これをフレアーアップという)。けれどもそのままGnRHアゴニストを与え続けていると、次第に下垂体の感受性がにぶって、性腺刺激ホルモンが分泌されなくなり、エストロゲンも低下していくわけです。

この方法の一番の問題は、エストロゲンを抑えすぎてしまう点にあります。そのために起きる副作用として、のぼせ、肩こり、頭痛、脱力感、便秘、むくみ、神経過敏、胃部不快感、しびれ、にきび、悪心、不眠、うつ状態、動悸、肝機能障害、筋肉痛、下痢、めまい、腟の乾燥、不正出血などがあります。急激に更年期と同じホルモン状態にするわけですから、一般に更年期症状として起きるものは、すべて起きる可能性があります(詳しくは薬の添付文書を参照)。さらにリュープリンでは、糖尿病の発症・悪化が報告されており、他のGnRHアゴニストでも同様の副作用が出る可能性は否定できません。使用中の体調の変化には十分気をつけ、必要に応じて検査を受けるようにしましょう。

また、低エストロゲン状態が長く続くと、骨量の低下を招きます。骨量が少ないまま更年期から老年期を迎えると、骨粗鬆症になる可能性がきわめて高いので、治療を始める前にエストロゲン値や骨量をはかり、使用開始後も定期的にチェックし、食事によるカルシウム摂取も心がける必要があります。開始時にすでにかなり骨量が低下している場合は、薬剤の変更も含め、検討し直す必要があります。

さらに、エストロゲンの低下から来るうつ症状も軽視できません。精神症状は人によって出方が違うので、誰にも必ずうつ症状が出るとは限りませんが、治療中に仕事の効率が落ちたり、激しく落ち込んでしまったりした場合は薬の副作用である可能性が高いので、自分を責めたり、いつまでもこういう状態が続くと思いこんだりせずに、冷静に対処しましょう。回りの人にもそれが薬の副作用であることをわかってもらい、必要であれば薬の使用を中止することも検討すべきです。

これらの副作用を緩和させるために、抑えすぎたエストロゲンを合成エストロゲンの投与によって補う方法(アドバック療法)もありますが、複数のホルモン薬を使ってでもあえてこの療法を行うことが、自分にとって効果の高いことかどうかを考えて選択する必要があります。漢方薬の併用で、ある程度のぼせや頭痛などの更年期症状を抑えることもできますので、自分の症状にあわせて対応策を考えるとよいでしょう。 なお、GnRHアゴニストには点鼻薬と注射薬の2つのタイプがありますが、注射薬では効果が長期間(基本的に4週間)持続するように出来ているので、副作用が強く出ても途中で止めることはできません。その点、点鼻薬では噴霧する回数を減らしたり、使用を中止したりすることで副作用を早く取り除くことができます。けれども、点鼻薬は花粉症などアレルギー性鼻炎の人には合わないかもしれません。薬の成分によっても効き方が違いますが、こうした剤形による特徴もふまえた上で治療法を選択したいものです。院内処方では薬の種類が限られていますが、院外処方の場合は選択の幅が大きいので、医師と相談して自分の都合に合った処方をしてもらいましょう。

以下に、GnRHアゴニスト療法の4種の薬剤について簡単な説明をします。

(1)スプレキュア

薬品としての一般名はブセレリンで、ブセレリン療法と呼ばれることもあります。そのうちの代表的な商品がスプレキュアで、これは点鼻薬と注射薬の2つの形態があります。点鼻薬は、1日に3回(朝、昼、晩)、左右の鼻に1噴霧ずつ、計6噴霧を入れます。骨量低下については、1クール(6ヵ月使用した場合)で3〜4%といわれます。値段は、標準的な使用量の場合、1ヵ月分で約27,000円です。なお、イトレリンなどもっと値段の安い後発品もあります。

一方、注射薬は、4週間に1度、通院して注射を打ちます。注射部位は添付文書によると腹部ということになっていますが、これは腹部注射でしか臨床試験をしていないからで、実際には上腕部などに注射しているケースも多いようです。注射部位は毎回変更して同一部位への反復注射は行なわないように、とされています。また、薬の成分は皮膚のすぐ下に貯められて徐々に作用していくようになっているので、注射後に強くもんだりしてはいけません。値段は点鼻薬に比べて高く、1回の注射で39,551円となっています。

(2)ナサニール

一般名はナファレリンで、商品名がナサニールです。こちらは点鼻薬のみで、スプレキュア点鼻薬との違いは、1日に2回(朝、晩)1噴霧ずつ、計2噴霧という点で、効き目および副作用は、スプレキュア点鼻薬よりやや強い程度です。値段は、標準的な使用量の場合、1カ月分で約2万8千円です。

(3)リュープリン

一般名はリュープロレリンで、商品名がリュープリンです。スプレキュア、ナサニールと作用は共通ですが、こちらは注射薬のみです。やはり4週間に1回、通院して注射を打ちます。用量が3.75mgのものと1.88mgのものがあり、内膜症の場合は通常3.75mgを使用しますが、体重が50kg未満の方の場合は1.88mgでもよいとされています。用量が多いほうが効き目が強く、副作用も強く出る傾向があり、1.88mgでもスプレキュアの注射薬より強いようです。骨量低下は、1クール(6ヵ月使用した場合)につき5〜10%といわれています。注射部位は上腕部、腹部、臀部のいずれかで、副作用軽減のために毎回違う部位に行います。注射後にもんだりすると、作用が急激に強く働く恐れがあるため、もんではいけません。値段は、1.88mgが1回分約3万9,000円、3.75mgが約5万6,800円です。

(4)ゾラデックス

一般名は酢酸ゴセレリンで、用量によってゾラデックス1.8mgデポとゾラデックス3.6mgデポの2種類がありますが、内膜症の治療に使われるのは1.8mgのほうだけです。リュープリンなどと同様、4週間に1度の注射で、投与部位は前腹部とされています。太めの注射針を使って半固形の薬剤を皮下に埋め込む形を取るため、必要に応じて部分麻酔をすることがあります。排卵を抑制する効果がリュープリンやスプレキュアより強いようです。値段は1回分が3万9,039円です。



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<子宮筋腫のホルモン療法>

子宮内膜症に適応のホルモン療法3種類
(1)ピルによる偽妊娠療法、
(2)ダナゾール療法、
(3)GnRHアゴニスト療法
のうち、子宮筋腫にも適応が認められているのは(ゾラデックスを除く)GnRHアゴニスト療法だけです。(1)や(2)も月経痛や過多月経、貧血に対する効果があるので、子宮筋腫の診断を受けている人がそれらを処方され、使用しているケースもあります。しかし、これは健康保険の取り扱い上は異例のことですから、医師がその薬を処方する理由を確認しましょう。医師が子宮内膜症を疑っているケースもあると思われます。

なお、偽妊娠療法の低用量ピルは、筋腫を持つ人には「禁忌」(使用してならない)とされています。しかし、不思議なことに、筋腫に影響を及ぼすとされるエストロゲンの含有量がもっと多い中用量ピルは「慎重投与」とされており、矛盾があります。(この点について詳しくは『たんぽぽ通信』34〜37号の特集「低用量ピルって何?」か、たんぽぽのホームページの中の「ピルと筋腫の関係について知ろう」をご覧ください)。とはいえ、低用量ピルには筋腫そのものを縮小させるような効果はありませんから、内膜症・腺筋症との合併があって辛い症状の主原因は筋腫ではない、という場合以外は、偽妊娠療法はお勧めできません。

GnRHアゴニスト(アナログ)療法

GnRHアゴニスト療法は卵巣機能を抑えて月経をとめる、偽閉経療法です。その仕組みについては内膜症のホルモン療法の項を参照してください。現在、スプレキュア、ナサニール、リュープリンの3種が筋腫の適応になっていますが、ゾラデックスは今のところ内膜症のみの適応で、筋腫には適応になっていません。下腹部痛や貧血など、月経にまつわる症状がある場合は、一時的に改善することができ、多くの場合筋腫のサイズも縮小するので、腰痛や圧迫症状にも効果が見られます。

しかし、最長6ヵ月の使用を終了したのちは、症状、筋腫の大きさとも元に戻ることが多く、短期間にのみ有効な「対症療法」です。さらに骨量の低下を始め、肝機能障害や糖尿病の悪化など重篤な副作用も少なくありません。子宮筋腫で症状の強い人は多数派ではなく、多くは漢方療法や生活療法に加え、症状が辛いときだけ鎮痛剤を上手に使えば、ふつうに生活できるという方です。そういう人にGnRHアゴニストのように強い薬はメリットが少ないといえます。そのため、製薬会社も「手術までの保存療法並びに閉経前の保存療法としての適用を原則」としています。

かなり強い症状に悩まされている方が、気持ちの上で手術に踏み切れない、あるいは仕事や家庭の事情ですぐに手術できないというときの時間稼ぎには有効です。月経が止まりますから、過多月経や貧血などの改善にはつながります。同時に、筋腫が縮小することで手術がしやすくなりますし、子宮の血流量自体が減るので術中の出血量を抑えることもできます。手術を前提として使用する場合は、最低3ヵ月、通常歯4ヵ月の使用で効果が出ますので、なるべくそのあと時間を空けずに手術を受けた方がいいでしょう。

ただし、GnRHアゴニストを使ってもほとんど縮小しない筋腫もあります。筋腫への血流が少なかったり、変性を起こしていたりする場合は効果が少ないので、手術をするからといって必ずしも事前にGnRHアゴニストを使用する必要はありません。また、子宮の内側に筋腫ができる粘膜下筋腫の場合は、GnRHアゴニストを使うと大出血を起こしやすくなるため、その使用には慎重を期す必要があります。

使用する期間については、手術を前提としている場合は3〜4ヵ月の使用で十分ですが、症状緩和のために長く使用したいという場合は、6ヵ月までは継続使用できます。閉経年齢(平均51歳)に近いかたの場合、「逃げ込み療法」といって、ホルモン療法を数クール行なううちに本物の閉経にもちこむ、というやり方もありますが、そういう場合も1クール終えた後は、次の投薬までに半年程度の休薬期間をおくことが必要です。中には、1日の使用量を減らすことで使用期間を延ばす人もいます。

このように手術を前提とせず、長期にわたって使用する場合は、事前に十分な検査を重ね、悪性腫瘍(肉腫)の疑いを否定する必要があります。また、更年期には、ホルモン療法をしなくても、骨量の低下が進み、血栓症や心疾患のリスクが高くなりますので、逃げ込み療法で使用される場合は定期的に骨量、肝機能、血液凝固系の検査を行なうのが理想的です。なお、GnRHアゴニスト療法の副作用については、内膜症のホルモン療法の項をご覧ください。

GnRH療法の個々の薬剤についての具体的な説明については、内膜症の項(aP19)をご参照下さい。ただし、リュープリンの場合は、筋腫と内膜症で使用する薬の用量に違いがあります。内膜症では通常3.75mgを使用し、体重が50kg未満の方の場合は1.88mgでもよいとされているのですが、筋腫の場合は通常の用量が1.88mgで、体重の重い患者や子宮が相当大きい患者の場合には3.75mgを投与する、ということになっていますので、その点をご注意ください。


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<逃げ込み療法>について

「逃げ込み療法」という名前に、1〜2クールの使用で確実に閉経して手術は回避できると思ってしまう(あるいは思いこまされている)人もいるようですが、現実にはGnRHアゴニストを使って実際に閉経に移行して手術が回避できる率はおよそ3割です。1〜2クールで閉経してくれれば骨量減少の心配もそれほどありませんが、中には8クールも使用してようやく閉経に至ったという人もいます。45歳以上で月経周期3〜5日目のFSH(卵胞刺激ホルモン)の値が25mIU/ml以上の患者では、1クールの使用で9割が閉経したという報告があり、一つのヒントにはなるかもしれませんが、あまり過大な期待を抱かずに、骨量が骨粗しょう症の危険域に入っている場合は、手術を含む他の選択肢も考慮しましょう。

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2005.05.16 「逃げ込み療法」へリンク
2005.05.09 「逃げ込み療法について」を追加
2005.01.24 更新