SOGC臨床診療ガイドライン
子宮平滑筋腫の管理 - No.128 2003年5月
◆◇ 目次 ◆◇
以下の臨床診療ガイドラインは臨床診療婦人科学委員会が審査を行い、カナダ産科婦人科学会(SOGC)の理事会が承認したものである。
●主要執筆者
Guylaine Lefebvre, MD, FRCSC,Toronto ONGeorge Vilos, MD, FRCSC, London ONCatherine Allaire, MD, FRCSC,Vancouver BCJohn Jeffrey, MD, FRCSC, Kingston ON
●臨床診療婦人科学委員会
Guylaine Lefebvre, MD, FRCSC (Chair),Toronto ON Catherine Allaire, MD, FRCSC,Vancouver BCJagmit Arneja, MD, FRCSC,Winnipeg MBColin Birch, MD, FRCSC, Calgary ABMichel Fortier, MD, FRCSC, Quebec QCJohn Jeffrey, MD, FRCSC, Kingston ONGeorge Vilos, MD, FRCSC, London ONMarie-Soleil Wagner, MD,Verdun QC(ジュニア会員)
要約
目的: この文書は子宮平滑筋腫の診断と管理に関するガイドラインとして用いられることを目的としたものである。
選択肢: このガイドラインを作成するに当たって検討した臨床診療の分野は、診断方法、薬物療法、筋腫融解術(myolisis)や選択的動脈閉塞術などの保存的治療法、筋腫核出術と子宮全摘術を含む外科的治療法である。ただし、治療の対リスク効果比(効果とリスクのバランス)は、当事者である女性と彼女の主治医との間で、個別に検討されなければならない。
結果: このガイドラインを用いることにより、子宮平滑筋腫の疾病過程や利用可能な治療の選択肢を考慮したうえで、リスクや期待される効果についても検討しながら、さらなる検査や治療へと進んでいく際の、当事者女性と主治医の意志決定が容易になると考えられる。
エビデンス: MEDLINE、PubMedおよびコクラン・データベースに収録されている1992年から2002年までの英文文献を検討した。文献検索に使用されたキーワードは「平滑筋腫」、「筋腫」、「子宮動脈塞栓術」、「子宮動脈閉塞術」、「子宮平滑筋肉腫」、および「筋腫核出術」である。ここで用いられるエビデンス(科学的根拠)のレベルは、カナダ定期検診特別委員会によって定義された基準を元に決定されている。
効果、害、およびコスト: 子宮筋腫の大部分は無症状であり、医学的介入やさらなる検査を必要とはしない。症状のある子宮筋腫の場合、根治療法は子宮全摘術だが、子宮の温存を希望する女性にとってそれは望ましい解決策ではない。それに代わる治療法については、その治療法に期待される効果とリスクを慎重に比較検討する必要がある。筋腫による症状がある女性を適切に選定して治療を行えば、QOL(生活の質)の改善が得られるはずである。保健医療制度と子宮筋腫を持つ女性自身によって負担される治療費は、治療を受けなかった場合に生じる損失や、現在進行中の治療および再治療の費用との比較において判断されるべきである。
勧告:
1.薬物療法による管理は子宮筋腫を持つ女性のニーズに合わせ、症状の軽減を目的として行なわれるべきである。薬物療法にかかる費用と副作用は、長期にわたる使用を制限する要因となりうる。(III-C)
2.妊娠能力の温存を希望していない女性に対しては、その他の選択肢や治療のリスクについての説明をした上で、子宮全摘術を、症状のある筋腫に対する根治的で、かつ高水準の満足度を得られる治療法として提案してもよい。(II-A)
3.筋腫核出術は子宮の温存を希望する女性にとってはひとつの選択肢となりうるが、その場合、再治療が必要となる可能性があることも説明すべきである。(II-B)
4.子宮鏡下筋腫核出術は、症状のある粘膜下筋腫の治療技術として、保存的外科療法の第一選択とされるべきである。(I-B)
5.子宮鏡下で筋腫を摘出する際には、電解質バランスを慎重にモニターすることが重要である。(I-B)
6.症状のある筋層内あるいは漿膜下筋腫を持ち、子宮温存は希望するが、妊娠能力の温存を望まない女性にとっては、腹腔鏡下
筋腫融解術は、筋腫核出術や子宮全摘術に代わる治療法となりうる。(II-B)
7.症状のある子宮筋腫を持ち、子宮温存を希望する一部の女性には、代替的な治療として
子宮動脈閉塞術が適応となる。(I-C)
8.子宮筋腫の治療に
子宮動脈閉塞術を選択しようとする女性には、予想されるリスクや、効果、受胎能力、妊娠のアウトカム(最終的な結果)、患者の満足度に関する長期のデータがないことを説明するべきである。(III-C)
9.筋腫以外の原因が認められない不妊の女性、ならびに体外受精治療を受けようとしている女性には、子宮内腔を変形させるような筋腫の摘出が適応となる。(III-C)
10.妊娠中の筋腫による合併症のリスクは、過去の妊娠で、それらの筋腫による合併症を経験したことがある女性以外では、筋腫核出術の必要性を示すものではない。(III-C)
11.筋腫合併妊娠をしている女性で、胎盤が筋腫の上、または極めて近いところに付着していることがわかった場合は、胎児のより詳細な観察が必要となる場合がある。(III-C)
12.子宮筋腫による急激な大量出血がみられる女性に対しては、エストロゲン投与や子宮鏡下手術、もしくは
子宮内膜掻爬術(D&C)等の保存的治療を検討することもできるが、中には子宮全摘術が必要になる場合もある。(III-C)
13.
ホルモン補充療法は閉経後の女性の筋腫の成長を引き起こす可能性もあるが、それが治療を要する症状を引き起こすことはないようである。また、筋腫を持つ女性が閉経後に出血や痛みを訴えた場合も、子宮筋腫のない女性と同様の検査が行なわれるべきである。(II-B)
14.症状のない平滑筋腫が悪性であるかもしれないという不安を軽減するためだけに、子宮全摘術を行うことを正当化するような
エビデンスは現時点では存在しない。(III-C)
認証: 本ガイドラインは、臨床診療婦人科学委員会(Clinical
Practice Gynaecology Committee)、およびカナダ産科婦人科学会(SOGC)の理事会によって審査、承認されたものである。
委託元:
カナダ産科婦人科学会(SOGC).
J Obstet Gynaecol Can 2003;25(5):396-405.
キーワード
平滑筋腫、筋腫、筋腫核出術、
子宮動脈塞栓術
これらのガイドラインは、刊行時における最新の臨床的、科学的発展の成果を反映したものであり、後に変更される可能性もある。その情報は必ず守るべき治療方法の手順を定めたものと捉えられるべきではなく、個々の医療機関がここに示された意見に対し修正を加えることができる。但し、個々の医療機関で修正を加える場合は、修正の内容について詳しく記録するべきである。また、SOGCからの書面による事前の許可なしに、本書の複写、複製を禁じる。
エビデンスの質に関する評価法5
勧告の分類法5
これらのガイドラインに含まれる勧告は、カナダ定期検診特別委員会における「勧告の分類」に記載された序列法を応用して作成されている。
A. 定期検診において特別にその疾患を考慮すべきであるという勧告を裏付ける有力な
エビデンスがある。
B. 定期検診で特別にその疾患を考慮すべきであるという勧告を裏付ける適正な
エビデンスがある。
C. その疾患を定期検診の対象に含むべきか除外すべきかに関しての
エビデンスは十分ではないが、他の根拠をもとに勧告を行なうことが可能である。
D. 定期検診ではその疾患を考慮すべきではないという勧告を裏付ける適正な
エビデンスがある。
E. 定期検診ではその疾患を考慮の対象から除外すべきであるという勧告を裏付ける有力な
エビデンスがある。
はじめに
子宮平滑筋腫は、最も一般的な婦人科腫瘍であり、生殖年齢にある女性の30%にみられる。1-3 子宮(平滑)筋腫をもつ女性の治療は、症状、子宮の大きさと成長率、本人の妊娠に関する希望などに合わせて個別に検討する必要がある。子宮(平滑)筋腫の大半は無症状であり、治療を必要としない。しかしカナダでは、子宮全摘術の75%が月経過多と子宮筋腫のために行われている。4 ここ10年間に、複数の新しい保存的治療法が導入されたが、これらの治療法を評価するような無作為比較対照試験は未だに十分な数が行われていない。そこでコホート研究と症例報告に基づくエビデンスから、これまでに知りえたリスクと効用について概説する。従って、女性たちは、未だ高水準のエビデンスは存在しないということを理解したうえで、治療法を選択すべきである。なお、このガイドラインで用いられるエビデンスの質の評価は、カナダ定期検診特別委員会の報告書に記された「エビデンス評価の基準」を元に定義されている(表)。5
臨床的特性
平滑筋腫の大多数は無症状である。2,6 子宮の平滑筋腫の最も一般的な症状は不正子宮出血である。2,6 筋腫核出術に関するこれまでに論文で発表されている症例の集積分析によると、核出術を受けた女性の30%が月経過多を経験していた。6
筋腫が月経過多を引き起こす仕組みは未だ明らかではないが、血管障害、粘膜下の腫瘍、子宮内膜の血液凝固障害などがその要因と考えられる。7,8
子宮筋腫では骨盤痛が生じることはまれであり、通常それは筋腫の変性、捻転、あるいは子宮腺筋症の合併を意味する。1,2,6
骨盤内の圧迫感、大腸機能障害、頻尿や尿意逼迫などの膀胱症状が見られる場合もある。9 尿路症状に対しては、子宮筋腫の外科的治療を行う前に、筋腫以外の原因がないかどうか十分な検査を行なうべきである。1,2,6 子宮筋腫を持つ閉経後の女性が痛みを訴えた場合は、平滑筋肉腫の可能性も考慮されるべきである。10,11
診断
子宮の大きさが妊娠12週 (子宮重量にしておよそ300g)、もしくはそれ以上の場合、臨床検査で正確に診断することが可能である。(卵巣・卵管等の)付属器を自信をもって触診できない場合には超音波検査が有効である。12
超音波の使用は成長の測定に関しては信頼性が高いが、治療管理に影響を与えることはほとんどないため、診察のたびに毎回使用することは推奨されない。大きな子宮筋腫をもつ女性では、時おり画像診断で水腎症の所見が示されることがあるが、その臨床的な意味合いは不明である。完全な尿管閉塞が起きることは非常にまれである。1,13
不正子宮出血が見られる女性では、隠れた子宮内膜疾患の可能性を排除することが重要である。4
薬物による管理
治療は子宮筋腫を持つ女性のニーズに合わせ、症状を軽減することを目的とすべきである。不正子宮出血の薬物による管理は別のガイドラインで検討されているのでそちらを参照されたい。4 低用量経口避妊薬が良性の筋腫を成長させるというエビデンスはないため、子宮筋腫に使用することは禁忌ではない。ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬(GnRHアゴニスト)は、点鼻スプレー、皮下注射、および徐放性注射の形態で利用可能である。2,14,15 一般に、子宮筋腫は治療開始から3ヵ月以内に初期体積の50%まで縮小すると予想されている。13,16 GnRHアゴニスト治療は3〜6ヵ月の期間に制限されるべきであり、使用中止後は通常12週間以内に子宮筋腫の再成長が始まる。13,16 GnRHアゴニストは、子宮筋腫を縮小し、月経由来の貧血を軽減する目的で手術前に用いられる。16 トラネキサム酸は筋腫に関連する月経過多を減少させる可能性がある。17 黄体ホルモンは筋腫の成長に関連している可能性がある。7 ダナゾールの使用により、筋腫体積は20%から25%縮小するとされている。18 ダナゾールを長期使用しても(筋腫自体の)変化はあまり期待できないが、月経過多を緩和するメリットはある。
■ 勧告
1.薬物療法による管理は子宮筋腫を持つ女性のニーズに合わせ、症状の軽減を目的として行なわれるべきである。薬物療法にかかる費用と副作用は、長期にわたる使用を制限する要因となりうる。(III-C)
外科的治療
子宮全摘術
まったく症状のない筋腫を持つ女性に子宮全摘術が適応とされるのは、急速に増大している筋腫、または閉経後に増大した筋腫が、非常にまれではあるが、平滑筋肉腫である疑いがある場合である。1,19,20 尿管閉塞を予防するため子宮全摘術が勧められていた時期もあったが、無症状の尿管閉塞はまれである。1,19
子宮が妊娠12週以上の大きさになっている女性でも手術の合併症の頻度が、より小さい子宮を持つ女性の場合と比較して、特に増加することはないことが最近の研究で示された。19
したがって今後の筋腫の成長に伴なって、術中合併症が増加するという理由で、予防的に子宮全摘術を薦める必要はない。19
妊娠・出産を終えた女性には、過多月経、骨盤内の圧迫感、貧血の原因となっている子宮筋腫の根治療法として、子宮全摘術が適応になる。21
子宮筋腫が原因とされる月経過多のために子宮全摘術を考慮する際には、その他の原因がないことを先に確認するべきである。さらに子宮内膜の疾患の可能性を排除するため、内膜検査を検討すべきである。4
子宮筋腫ではめったに骨盤痛は起きないため、痛みが主要症状である場合、その他の原因についても検討するべきである。22また子宮全摘術によって、子宮筋腫を持つ女性の尿失禁の症状を改善することは期待できない。2,6
■ 勧告
2.
妊娠能力の温存を希望していない女性に対しては、その他の選択肢や治療のリスクについての説明をした上で、子宮全摘術を、症状のある筋腫に対する根治的で、かつ高水準の満足度を得られる治療法として提案してもよい。(II-A)
保存的外科療法
開腹による筋腫核出術
筋腫核出術で子宮は温存できるが、子宮全摘術より失血のリスクが大きく、手術時間も長いことが、既存のデータにより明らかになっている。9 ただし、尿管損傷のリスクは筋腫核出術のほうが小さい。9 子宮筋腫の再発率は15%で9、筋腫核出術を受ける女性の10%は5〜10年以内に子宮全摘術を受けることが必要になる。9 筋腫核出術を受けることを予定している女性には、手術中の所見と手術の経過によっては子宮全摘術が必要となる可能性もあることを事前に説明するべきである。子宮全摘術は依然として、外科的解決を必要とする女性の大部分が選択する治療法である。22
■ 勧告
3. 筋腫核出術は子宮の温存を希望する女性にとってはひとつの選択肢となりうるが、その場合、再治療が必要となる可能性があることも説明すべきである。(II-B)
腹腔鏡下筋腫核出術
いくつかの骨盤内疾患において、入院期間を短縮し、回復時間を早めるために、婦人科医たちは最小侵襲手術に取り組んできた。筋腫は腹腔鏡下に取り除くことが可能である。18,23-25
この外科的療法の成功は、小さな腹部切開創から腫瘍を取り出し、子宮を再建する外科医の能力にかかっている。1cmから17cmの筋腫を持つ女性500人以上を包括する、複数のケースシリーズ(症例集積)研究が発表されている。23-25 開腹手術と比べると、腹腔鏡下手術は時間がかかるようだが、回復はより早いとされている。23-25 腹腔鏡下に子宮を適切に多層縫合することができるかということがこの術式の懸念として挙げられる。術後の妊娠中に子宮破裂した例が報告されている。24 筋腫再発のリスクは腹腔鏡下手術後により高く、27ヵ月後の再発リスクは33%であった。26 ある症例対照研究では、腹腔鏡下筋腫核出術を受けた女性のほうが術後癒着は少なかった18 が、腹腔鏡下であっても筋腫核出術後の癒着は60%の割合で起こると報告されている。18,24
外科的手法の選択は、主に外科医の専門的技術に依存している。モルセレーター(組織細切除去装置)の使用により、より大きな筋腫の除去が可能になったが、周辺臓器への損傷の危険がある。18,23,24 既存の勧告を検討したところ、大半が5cmから8cmを超えている子宮筋腫や、多発性筋腫、筋層内の深い位置に筋腫が存在する場合については開腹手術を推奨していた。18,23,24
腹腔鏡併用筋腫核出術は腹腔鏡下で筋腫を部分的に摘出し、小さな腹部切開創から腫瘍を取り出し、さらにこの切開創より子宮の創部を縫合するという術式である。18 これらの新しい術式の長期的影響に関する報告は存在しない。
子宮鏡下筋腫核出術
不正子宮出血があって、通院で診断的子宮鏡検査を受けた女性2049人の30%に、子宮内腔もしくは粘膜下の筋腫が見つかった。27 子宮鏡下で筋腫を摘出することは十分可能で非常に効果的であり、28,29
内腔に突出した筋腫、もしくは粘膜下にあって基底部の面積が小さい子宮内筋腫による症状に悩む女性の選択肢として考慮されるべきである。28,29 適応対象には不妊、反復流産、不正子宮出血などが含まれる。28,29 筋腫が粘膜下にある、もしくは子宮内腔が変形している女性においては、体外受精(IVF)妊娠率が低下する可能性がある。28,29
妊娠を望んでおらず、不正子宮出血が主な症状である場合、筋腫核出術だけでなく、子宮内膜除去術(endometrial
ablation)または切除術(resection)をあわせて行なうことで、不正出血をより効果的に治療できる可能性がある。30
近年ではバイポーラ技術を使用した電気外科的ループ電極、ならびにモノポーラ、バイポーラ両方の技術を使用する気化電極31 が、子宮鏡下筋腫核出術を容易にする新技術として紹介されている。32
GnRHアナログを筋腫核出術の術前3ヵ月間使用することは、貧血の女性の術前ヘモグロビン値やヘマトクリット値を増加させ、さらに筋腫の収縮、子宮の血流量の減少、子宮内膜腔の縮小、子宮内膜の菲薄化をもたらす可能性もある。33
しかし、子宮鏡下筋腫核出術は、重大な合併症を伴うこともある。33,34 術中出血は緊急子宮全摘術につながる場合もあるほか、生殖器系統、34 対極板の部位35 や腸管36 への電気熱傷が報告されている。過度の灌流液吸収による、低ナトリウム血症、失明、昏睡、死亡の例も報告されている。37 灌流液吸収は術中の子宮内圧、子宮内腔の大きさ、手術の所要時間、筋腫と子宮自体の血管分布状態に関連している。30
長時間にわたる外科的治療は、灌流液バランスの注意深い監視を必要とする。現在ではいくつかの体液モニターシステムが利用できる。執刀医は自らの専門的判断力と、多発性筋腫や大きな子宮内筋腫を切除する能力について、現実的に評価する必要がある。
子宮鏡下筋腫核出術後の妊娠能力と妊娠結果について記述したデータは限られてはいるが、腹腔鏡下もしくは開腹による核出術後の結果と大きく違わないようである。36,38-40
1422人の女性を対象とした5つの研究において、子宮鏡下筋腫核出術は不正子宮出血の治療として臨床的に効果があった。失敗率は3〜4年間後のフォローアップ(追跡調査)で14.5%〜30%であった。41
■ 勧告
4.子宮鏡下筋腫核出術は、症状のある粘膜下筋腫の保存的外科療法の第一選択とされるべきである。(I-B)
5.子宮鏡下で筋腫を摘出する際には、電解質バランスを慎重にモニターすることが重要である。(I-B)
腹腔鏡下筋腫融解術
筋腫融解術(Myolysis)とは、直接筋腫を枯死させる、あるいは血液供給を遮断するために、筋腫にエネルギーを加えるような術式を指す。42-48 血液供給を絶たれた筋腫は、栄養や、性ホルモン、成長因子が減少するため、おそらく縮小もしくは完全に変性すると予測される。腹腔鏡下筋腫凝固術(myoma
coagulation)が、筋腫核出術や子宮全摘術に代わる治療法として、最初に提案されたのは1980年代後半のことである。43,44 不正子宮出血や骨盤痛、隣接する臓器の圧迫症状のために手術を必要とするような、症状のある筋腫が筋腫融解術の適応対象となる。45-47 筋腫の数が4つ未満で、それぞれの大きさが5cm以下である女性、もしくは最大筋腫の径が10cm未満である女性は、筋腫融解術の適応対象となる。45,47
同時に癒着剥離術、子宮内膜症病変の切除術、付属器手術など、他の骨盤内病変の外科的治療を行なうことができる。原則として、月経過多改善の効果を高めるために、腹腔鏡下筋腫融解術(laparoscopic
myolysis)の終了時に、子宮鏡下子宮内膜除去術(hysteroscopic
endometrial ablation)もしくは切除術(resection)を実施することが推奨される。骨盤の感染、菌血症、出血などの合併症の報告は1%未満である。46
一般に、3ヵ月のGnRHアゴニストの術前投与で子宮筋腫の総体積はおよそ35%から50%減少する。33 さらに筋腫凝固術を実施することで、子宮筋腫の総体積は30%減少し、合わせておよそ80%に永久的と考えられる縮小が得られる。限られた数の女性に、術後に腹腔鏡検査による再診断を行なったところ、電気凝固した筋腫の上に様々な度合いの癒着形成が確認された。46,49
腹腔鏡下筋腫融解術後の子宮壁の完全性と抗張力がどれくらい期待できるかわかっておらず、筋腫融解術を行なった女性は妊娠を避けることが推奨される。45-47,49 治療を受けた女性の中には妊娠して、無事に帝王切開で出産した人もいるが、腹腔鏡下筋腫融解術後の妊娠能力と妊娠の結果は未だ不明である。妊娠第三期における子宮破裂の症例が3件、うち1件は胎児死亡が報告されている。50 したがって、筋腫融解術は女性が確かにこれ以上子供を望んでいないことが確認された場合にのみ考慮されるべきである。
■ 勧告
6. 症状のある筋層内あるいは漿膜下筋腫を持ち、子宮温存は希望するが、妊娠能力の温存を望まない女性にとっては、腹腔鏡下
筋腫融解術は、筋腫核出術や子宮全摘術に代わる治療法となりうる。(II-B)
選択的子宮動脈閉塞術
選択的子宮動脈閉塞術は症状のある子宮筋腫を持つ女性において、他の薬物治療や外科的治療が禁忌であったり、本人が拒否したり、または効果が見られなかった場合に、子宮全摘術に代わる包括的な治療法である。51
子宮動脈の起始部における血管クリップ52 かバイポーラー(二極性)電気凝固法を使用した腹腔鏡下の(血管)閉塞術で、子宮筋腫を有効に治療することができる。53 子宮動脈は膣円蓋外側部から2cm以内に位置しているため、外科的手術もしくはカラードップラー法による超音波プローブを使うことで、経膣的子宮(血管)閉塞が可能で、現在いくつかの治療法が研究されている。
子宮動脈閉塞術の最も一般的な手法は選択的な子宮動脈カテーテル使用塞栓術である。子宮筋腫の治療法としての塞栓術は1990年にフランス51 で、1995年に米国で51 、そのすぐ後にカナダで54
導入された。症状のある子宮筋腫に対して外科的治療を避けることを希望している女性が適応対象となる。
子宮動脈塞栓術を受けるすべての女性に対し、事前にこの治療は開始されてから10年も経っておらず、受胎能力や妊娠のアウトカム(最終的な結果)を含め、長期的な効果とその持続性については、未だ不明であることの説明が行なわれるべきである。この術式では後述するような副作用や合併症が生じる可能性がある。術前評価には、詳細な病歴、一般身体検査および内診、全血算(CBC)、電解質、腎機能および血液凝固機能検査を含むべきである。臨床的に必要と考えられ、技術的に可能な場合には、診療手順の一環として頚部の細胞診および子宮内膜組織診を、既存のガイドラインに基づいて実施するべきである。4 子宮動脈塞栓術は血管内治療(インターベンション)に熟練した放射線科医によって、カテーテル室で無菌技術を用いて実施される。
手術中のリスクと合併症
手術中のリスクと合併症は感染、出血、大腿動脈穿刺部位の血腫55-58、ヨード造影剤に対するアレルギーまたはアナフィラキシー反応55-58、不完全な子宮動脈閉塞、標的臓器以外の血管の誤塞栓などを含む。51,55-58 このような合併症は治療のおよそ1%から2%の割合で発生する。51,55-58
子宮動脈閉塞後の副作用と合併症
初期もしくは急性の腹部骨盤痛
ほとんど全ての女性がある程度の激しい痛みを経験し、しばしば集中的な疼痛管理治療と術後監視のために入院を必要とする。子宮の大きさ、筋腫の数や大きさ、治療に要した時間、使用されたPVA (ポリビニルアルコール)粒子の量と、治療の臨床成果との相関関係は全く確立されていない。54
痛みは、子宮および子宮筋腫の非特異的な虚血が原因と考えられ、モルヒネや非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)等により、疼痛管理が可能である。51
閉塞後症候群
最大40%の女性が、広範囲の腹痛、全身の倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、微熱、白血球増加といった臨床症状と検査所見の組み合わせを経験する。55
この症候群には個人差があり、静脈内輸液とNSAIDsを含む適切な疼痛管理からなる保存的支持療法により、通常48時間から2週間以内で治まる。
感染
塞栓後の熱性疾患と敗血症の発生率は1.0%から1.8%と報告されている。57,59 感染には子宮筋層内膜炎を伴う子宮留膿腫、両側慢性卵管炎、卵管卵巣膿瘍、筋腫感染が含まれる。57 最も頻繁に検出される病原体は大腸菌である。59
抗菌薬療法が効果をあげた女性もいたが、その他長期の入院、集中治療、子宮全摘術を必要とした女性もいた。1人の女性は子宮動脈塞栓術後7日間の集中治療を行なった後、腹式子宮全摘術を実施したにも関わらず、敗血症によって死亡した。60
抗菌薬の予防的使用の有効性は確立されていないため、既存のガイドラインではその使用を感染症の危険性が高い女性に限定している。61
持続的もしくは慢性の痛み
5%から10%の女性では、痛みが2週間以上持続している。感染がない場合の持続痛、すなわち2〜3ヵ月以上続く痛みが見られる場合は、外科的介入が必要となる。塞栓後6ヵ月以内の女性の最大2%が、術後の痛みのために子宮全摘術を受けたことが報告されている。58,62
卵巣機能不全
一時的あるいは永久的な卵巣機能不全は子宮動脈塞栓術後の女性の最大10%において報告されている。57,63-66 卵巣機能不全が生じる原因は不明であるが、45歳以上の女性において塞栓後卵巣機能不全が起こりやすいというエビデンスがある。63-66
妊娠の希望がある女性にとっては、卵巣機能不全は深刻な問題となりうる。
月経時出血の異常
月経時出血の改善は子宮動脈塞栓術後の女性の最大90%で報告されている。54 月経の改善は年齢に依存し、50歳以上で最も効果が高い。一時的または永久的な無月経はそれぞれ15%と3%の女性において報告されている。57,58,67 こうした塞栓術後の無月経も強く年齢に依存しており、卵巣機能の(年齢的な)衰えと関連すると報告されている。57,58,67,68
筋腫分娩
動脈塞栓後に、およそ5%から10%の女性で、子宮頚管からの筋腫の自然娩出が起こると報告されている。59,69 子宮鏡検査で粘膜下筋腫をもつと確認された女性の60パーセントが、子宮動脈塞栓術後に筋腫を経腟的に分娩した。69
子宮壁の強度への影響
子宮動脈塞栓術後の子宮壁の物理的特性、強度、および組織病理学的特徴は未だ不明である。子宮動脈塞栓術後の子宮壁の欠損70 および子宮の瘻孔71 が複数件、広範性子宮壊死72 が1件報告されている。子宮動脈閉塞後の正常妊娠と分娩の報告はあるものの、この治療を行なった後の妊娠・出産のアウトカム(最終的な結果)に関する長期データは不十分であり、塞栓術の適応は、妊娠を希望しない女性だけに留めるのが慎重な判断であろう。73
子宮全摘術
子宮動脈塞栓術後に子宮全摘術を行なった女性の数は、治療の失敗を測定する指標として使用されている。54 塞栓後6ヵ月以内の子宮全摘術実施率は1%から2%であると報告されており、感染、出血の持続、痛みの持続、子宮筋腫脱落、子宮悪性腫瘍などが全摘適応の対象とされた。12,56,57,59
死亡率
英国では、敗血症による1人の死者が報告されている。60 またイタリアでは、子宮動脈塞栓術後の骨盤静脈の血栓による肺塞栓症によると考えられる1人の死亡が確認されている。74 米国とカナダでは約10,000〜12,000の施術例があるが、術後の死亡例の報告はない。18,59 総合的な死亡率は1000症例あたりおよそ0.1〜0.2症例であると推測される。
■ 勧告
7.症状のある子宮筋腫を持ち、子宮温存を希望する一部の女性には、代替的な治療として
子宮動脈閉塞術が適応となる。 (I-C)
8.子宮筋腫の治療に
子宮動脈閉塞術を選択しようとする女性には、予想されるリスクや、効果、受胎能力、妊娠のアウトカム(最終的な結果)、患者の満足度に関する長期のデータがないことを説明するべきである。(III-C)
個別の検討課題
筋腫と不妊
筋腫が妊娠能力に与える影響については、様々な見解が存在する。子宮筋腫が唯一の原因となっている症例が不妊症に占める割合はおそらく2%〜3%に留まるであろう。2 子宮筋腫が不妊を引き起こすという印象は、子宮筋腫の除去が妊娠率の向上につながったとする、複数のケースシリーズ(症例集積)研究によってもたらされたものである。2,6 妊娠率向上のために行なわれた腹式筋腫核出術後のアウトカム(最終的な結果)に関する複数の文献を総合して検討した研究によると、前向き研究における累積妊娠率は57%となっている。75 筋腫以外の不妊要素が全く特定されない場合の累積妊娠率は61%であった。75 この問題を検討しているすべての研究に関する最近のメタアナリシスでは、対照群より妊娠率と着床率が低いのは、子宮腔内に筋腫が突出している女性のみであり、そういう女性には外科的介入が最も適切であることが明らかにされている。76
しかし、不妊症改善を目的とした筋腫核出術の無作為化比較試験は未だ発表されていない。
子宮筋腫が妊娠能力を下げる可能性についての説明として、以下のようなさまざまな説が提唱されている:2,77 子宮の収縮機能不全、病巣部の子宮内膜血管障害、子宮内膜の炎症、血管作用物質の分泌、子宮内膜の高アンドロゲン環境。これまでに論文として発表されている研究では、粘膜下筋腫の方が妊娠能力の低下を引き起こしやすいとされている。77,78 5cm以上の子宮筋腫、あるいは子宮頚部もしくは卵管口に近いものも、より問題を起こしやすいと考えられている。77
体外受精による不妊治療を受けている女性を対象とした研究から、子宮内腔を変形させるような粘膜下、または筋層内の筋腫は受精卵の着床および妊娠率に悪影響を及ぼすことがわかった。78,79 他の研究では、子宮内腔の変形が全く見られない場合でも、子宮筋腫が体外受精の着床率に影響を与えることが示されている。80,81
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9.筋腫以外の原因が認められない不妊の女性、ならびに体外受精治療を受けようとしている女性には、子宮内腔を変形させるような筋腫の摘出が適応となる。(III-C)
筋腫と妊娠
胎児超音波検査を受ける女性の推定4〜5%に、子宮筋腫が検出される。30代後半まで妊娠しない女性が増加しているが、この年齢は子宮筋腫が育ちやすい年齢でもある。ほとんどの子宮筋腫(80%)は、妊娠中同じ大きさを保つか縮小する。82 子宮筋腫が妊娠に与える影響に関する文献には相矛盾するエビデンスが示されている。82-85
合併症の危険性とその種類は、筋腫のサイズ、数、および位置に関連すると見られている。胎盤が子宮筋腫の上、または極めて近いところに着床した場合、流産、早産、胎盤早期剥離、前期破水、もしくは子宮内発育不全の危険性が高まる可能性がある。83 子宮下部に位置する子宮筋腫は胎児の胎位異常、帝王切開、分娩後出血のリスクを高める。83
しかし、12708人の妊婦の、超音波と診療記録の大規模な後向き研究からは、一般に子宮筋腫は分娩の方法、胎児の成長、前期破水のリスクに影響を及ぼさないとの結論が得られている。84 但し、切迫早産と静脈注射による子宮収縮抑制薬の投与に関しては、同研究でも統計的に有意な増加が見られた。84 また、直径20cmを超す巨大筋腫においては早期胎盤剥離と腹部の痛みの発現率が高かった。84
妊娠中の女性では制御不能の出血の危険性が高まるため、筋腫核出術を行なうべきではない。但し、症状のある漿膜下筋腫で太さ5cm未満の茎を持つものについては、出血の危険性が少ないため、例外とされる。85
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10.妊娠中の筋腫による合併症のリスクは、過去の妊娠で、それらの筋腫による合併症を経験したことがある女性以外では、筋腫核出術の必要性を示すものではない。(III-C)
11.筋腫合併妊娠をしている女性で、胎盤が筋腫の上、または極めて近いところに付着していることがわかった場合は、胎児のより詳細な観察が必要となる場合がある。(III-C)
急性大量出血
ごくまれに、子宮筋腫の女性に命に関わるほどの急激な大量出血が起きることがある。このような症状の管理に関する英文文献は、少数の事例報告があるのみである。14,15
救命措置をとった後に、通常の機能性子宮出血に用いられるようなホルモン剤投与を行うことも有用であろう。14,86 高用量エストロゲンの投与は血管収縮を引き起こし、子宮内膜を安定させる効果がある。14
子宮内膜掻爬術(D&C)は出血を抑える効果がある。86 粘膜下筋腫が子宮頚部から脱出しているのが見られる場合は、通常、それを除去することで出血は止まる。87 粘膜下筋腫では、GnRHアゴニスト療法の開始後、まれにひどい出血をおこす場合がある。14,15 出血している腔内の粘膜下筋腫の子宮鏡下切除術は選択肢の一つではあるが、視野が十分に確保できなくて技術的に難しい場合がある。15 保存的手段によって改善が得られない症例では、子宮動脈閉塞術が容易に行なえる場合はそれを実施してもよいが、最終的には、子宮全摘術が必要となるケースもある。
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12.子宮筋腫による急性大量出血がみられる女性に対しては、エストロゲン投与や子宮鏡下手術、もしくは
子宮内膜掻爬術(D&C)等の保存的治療を検討することもできるが、中には子宮全摘術が必要になる場合もある。(III-C)
閉経後の筋腫
子宮筋腫は閉経後、通常元の大きさのおよそ半分にまで縮小する。既存の文献を調べたところ、HRT(ホルモン補充療法)が閉経後の女性の子宮筋腫に与える影響に関する無作為割付比較試験が5つ見つかった。88 この文献調査によって、エストロゲンとプロゲステロンによる複合HRT(ホルモン補充療法)、特にエストロゲン貼付剤を使用したものは筋腫の成長を引き起こす可能性があることがわかったが、筋腫の成長によって臨床的症状が起きることはなかった。88 最近の前向き研究では、同様の結果(筋腫の増大)が見られたのはHRT使用開始後最初の2年間に限られ、3年目以降は筋腫体積の減少が見られた。89
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13.
ホルモン補充療法は閉経後の女性の筋腫の成長を引き起こす可能性もあるが、それが治療を要する症状を引き起こすことはないようである。また、筋腫を持つ女性が閉経後に出血や痛みを訴えた場合も、子宮筋腫のない女性と同様の検査が行なわれるべきである。(II-B)
筋腫と子宮平滑筋肉腫
子宮肉腫は、20歳以上の女性10万人あたり1.7人に見られる極めてまれな婦人科悪性腫瘍である。10 肉腫は全ての子宮悪性腫瘍の1.2%〜6%を占めており、平滑筋肉腫はそのうちのおよそ25%を占める。子宮平滑筋肉腫と診断された患者の平均年齢は44〜57歳と報告されている。90 あるケースシリーズ(症例集積)研究では、47%の女性が41歳から50歳の間であった。91
平滑筋肉腫が見つかった女性が、症状を経験した期間の中央値(メジアン)は2.7ヵ月であった。91 それらの女性の50パーセントは不正出血を経験しており、粘膜下に病変がある場合はその頻度はより高くなる。その他の症状としては、頻度が高い順に、痛み、腹部の増大、異常なおりものがある。90
閉経後の女性において子宮腫瘍が増大する場合、良性平滑筋腫より平滑筋肉腫の可能性が示唆される。また、平滑筋肉腫は単独の大きな子宮腫瘍として存在する傾向があり、複数の子宮腫瘍がある場合はそのなかで最も大きなものに限られる。腫瘍は、組織壊死、内部の嚢胞性変性、および出血のため、柔らかく触れる傾向がある。平滑筋肉腫は、核出術を行なう際、その浸潤的性質のため周囲の子宮筋層と分離することが難しい傾向がある。頚部に発生する平滑筋肉腫は、平滑筋肉腫10症例に1例未満である。90
平滑筋肉腫が術前に診断されることはまれである。子宮頚部の細胞診、子宮内膜組織診、および超音波(カラードップラー法を含む)等の検査法の信頼性は確立されていない。11,91 悪性の平滑筋腫瘍の診断のための経皮的針生検の有効性を評価する予備研究が報告されているが、さらなる評価が必要である。92,93 子宮筋腫の生体組織検査を通常診療の一環に組み込むことを正当化するだけのエビデンス(根拠)はない。磁気共鳴イメージング(MRI)は平滑筋腫瘍が良性か悪性かを見分ける検査法としては有望で、MRIで不明瞭な境界が認められる子宮平滑筋腫瘍は、悪性疾患である可能性が高い。94
現時点では、症状のない子宮平滑筋腫に対して、悪性であるかもしれないという不安を軽減するためだけに、子宮全摘術もしくは筋腫摘出術を実施することを正当化するエビデンス(根拠)はない。症状がないにも関わらず、たまたま平滑筋肉腫が発見される確率は2000人に1人で、良性疾患における子宮全摘術の手術による死亡率(1:1000〜1.6:1000)とおよそ同等である。1 閉経前の平滑筋腫の急速な増大という臨床診断は、それ以外の症状が全くない場合、子宮平滑筋肉腫の予測には役立たず、筋腫摘出術または子宮全摘術適応の単独の指標として用いられるべきではない。95
子宮全摘術が適応となるような、顕著な徴候および症状がある女性であっても、子宮平滑筋肉腫の出現率は0.3%から0.7%である。1,90,91 さらに41〜50歳の女性では、出現率は0.89%に高まる。91 悪性腫瘍の疑いの指標は、加齢や過去の骨盤内放射線照射歴とともに高まるものである。10,90,91
平滑筋腫の子宮温存療法を考えている女性には、ごく稀に平滑筋肉腫の診断の遅れが生存率を下げることもあることから、その潜在的リスクについての説明を行うべきである。11,91,96 子宮鏡下の子宮内除去術や切除術、GnRHアゴニスト療法、子宮動脈閉塞術などの、筋腫を保存的に管理するときには、しっかりとしたフォローアップが推奨される。96,97
平滑筋肉腫の術中もしくは術後診断は腫瘍学者による診断を必要とする。平滑筋腫瘍の術中凍結切片は、手術時点で確定診断を下すのに有効とはみなされていない。11,91,95 妊娠能力の温存を望む女性に対し、核出術単独で治療が成功した例が報告されているが、これは例外と考えるべきであろう。89 付属器への転移は報告されているが、90 若い女性では、付属器切除を行なうかどうかは個々の患者の状況を考慮して決めるべきである。子宮平滑筋肉腫の診断のために現在一般的に行われている手術は、腹式子宮全摘と両側卵管卵巣摘出である。これらの腫瘍には血行性転移の傾向がある。診断時点でのリンパ節への転移の発生は5%未満である。90 リンパ節切除が生存率に影響するということは証明されていない。10,90 現時点で、考えられる最良の治療法をもってしても、T期の生存率は50%である。10,90
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14.症状のない平滑筋腫が悪性であるかもしれないという不安を軽減するためだけに、子宮全摘術を行うことを正当化するような
エビデンス(根拠)は現時点では存在しない。(III-C)
結論
女性の30パーセントは子宮筋腫を持っており、その大部分は医学的介入を必要とはしない。症状のある女性に関しては、子宮平滑筋腫の治療の選択肢は拡大している。これらの技術は比較的新しく、その多くは有望であるものの、長期のデータを欠いていることが多いため、確信を持って全てのリスクと効果を提示することはできない。現在も続けられている研究とデータ収集は、今後、技術の進歩と共に現れる、より新しい選択肢の相対的利点を評価する助けとなるだろう。
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