特集 「低用量ピル」って何?《Part 4》

日本産科婦人科学会より、質問状の回答届く

(以下はたんぽぽの機関誌『たんぽぽ通信』37号からの転載です。

前号でお知らせしましたように、1月11日づけで厚生大臣・丹羽雄哉氏、日本産科婦人科学会・青野敏博氏、低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン検討委員会・水口弘司氏の3者宛てに、ピル処方ガイドラインにおける筋腫の禁忌規定に関する質問状を送付しました。その主たる議論はこれまでのたんぽぽ通信でもご紹介してきたので、ここには繰り返しませんが、基本的には、筋腫がピルの禁忌条項に挙げられているのは不 自然ではないか、ということから、以下のような質問をお送りしたのでした。

(1) 低用量ピルが子宮筋腫に与えると思われる悪影響には具体的にどのようなものが考えられるのか?それに関して疫学的あるいは統計的に十分な信頼性のあるデータは存在するのか?データがあれば、ぜひともご紹介いただきたい。
(2) ピルが子宮筋腫に悪影響を及ぼすというデータがあるならば、その悪影響とは、乳がん・子宮体がんと同列に並べて、「絶対禁忌」の対象としなくてはならないほど重篤なものだと考えられるのか?「相対禁忌」の扱いではなぜいけないと思われるのか?ご説明をお願いしたい。
(3) 97年時点でのガイドライン案では、「相対禁忌」の扱いにすらなっていなかった子宮筋腫を、今回の承認に際して「絶対禁忌」の欄に含めることになったのは、どのような経緯があったのか?おわかりになる範囲でお教えいただきたい。

回答の期限は、たんぽぽ通信の締め切りに合わせ、2月10日としてありました。しか し、その時点で回答を下さったのは日本産科婦人科学会だけでした。あとの2者はまっ たく無回答です。日本産科婦人科学会の回答というのも、以下の通り、こちらの質問の意図から大きく外れたものでした。

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子宮筋腫・内膜症体験者の会 「たんぽぽ」御中                           

社団法人日本産科婦人科学会
会長  青 野 敏 博
倫理委員会
委員長 藤 本 征一郎

平成12年1月11日付の貴会からの「低用量ピル使用ガイドラインにおける禁忌規定に関す る質問状」を受領しました。

ご指摘のように「WHOの避妊法使用学適応基準」では、子宮筋腫は禁忌対象疾患にはなっておりません。日本産科婦人科学会、日本母性保護産婦人科医会、日本不妊学会、日本性感染症学会、日本家族計画協会および日本エイズ学会が共同作成した「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(案)」(平成8年11月)でも、子宮筋腫は禁忌対象疾患には含まれておりません。

「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」は、その後当局などとの検討の経過の中で、禁忌対象疾患の中にエストロゲン依存性疾患の1つとして子宮筋腫が入った経緯があります。

本会としては、子宮筋腫を考慮に入れて、今後前向きに禁忌対象疾患の再検討を行っていきたく思います。                                                                             以上。

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これではまるっきりこちらが送付した質問状の内容をなぞっているだけで、何も新し い情報を提供していません。筋腫が禁忌対象疾患に入ったのは「当局」などとの検討の末とのことですが、この「当局」というのは、厚生省なのでしょうか?だとしたら、厚生省に聞けばもっとちゃんとした回答が得られるのでしょうか? (でも回答は来ていな いのです!)  

さらに問題なのは、まともな説明も無しにいきなり「今後前向きに禁忌対象疾患の再検討を行って」いきたいという結論になってしまうことです。確かに私たちは「なぜ相対禁忌(慎重投与)の扱いではないのか?」という質問をしています。しかし、それは決してちゃんとした情報提供もなしにただ「絶対禁忌」を「相対禁忌」に変更すれば良い、ということではありません。  

製薬会社の立場からすれば、筋腫が禁忌対象疾患からはずされることは、市場拡大につながるわけですから、おそらくありがたいことでしょう。しかし、患者にとってみれば、きちんと情報を与えられずに「ああ、筋腫でも使えますよ〜」という形で処方される可能性もあるわけで、下手に相対禁忌にされたらかえって危ないかもしれません。だからそういうことがないように情報公開をお願いしているのに、結局患者にきちんと説明しようという誠意が見られないのです。  

とはいえ、日本産科婦人科学会の回答からは、やはり子宮筋腫を禁忌にしたことには明白で正当な理由はなかったのだ、ということが察せられます。今回、ピルの認可のために行なわれた臨床試験を論文としてまとめたもの(いろいろなメーカーから多数の薬の申請があったので12本も論文が出ています)に目を通してみたのですが、そもそも臨床試験の対象に、子宮筋腫を持つ女性を含めるかどうか、ということがきちんと統一さ れていなかったようで、試験を実施した研究班ごとにバラバラでした。始めから筋腫の人を除外した試験もあれば、慎重投与の扱いにしている試験もある。「エストロゲン依存性腫瘍」とだけ記して、そこに筋腫患者を含めたかどうかを明記していないものもあります。こういうところに気づいてしまうと、臨床試験自体がいい加減なのではないか、と勘ぐりたくなります(実際ピル承認に反対している人々は、ピルの臨床試験のずさんさを糾弾しています)。これはまったくの推測ですが、このような曖昧な形で行なわれた臨床試験だから、とりあえず筋腫は禁忌にしておこうというような判断があったのかもしれません。国がその程度の試験をもとに薬を承認しているのなら、一体私たちはどこの情報をもとに自己決定をすればいいんでしょう?  

というわけで、筋腫とピルの関係については、そう簡単にはっきりと白黒がつくものではないみたいです。そういう意味では筋腫を持っている方が、避妊法の第1選択とし てピルを選ぶことは避けたほうがよいような気がします。対症療法の一つとしても、 GnRHはもう絶対に使いたくない、漢方も試したけどだめ、でも手術はどうしても避けた い、というケースでなら、ピルを試してみる価値があるかもしれません。こうしてこの問題に頭をつっこんでしまったからには、今後も厚生省や日本産科婦人科学会に情報公開を求めて行きたいと思います。新たに何かわかりましたら、皆さんにご報告します。 また、筋腫の方だけでなく内膜症や腺筋症をお持ちの方で、低用量ピルを月経関連トラ ブルの対処法として使ってみた方がおられたら、ぜひたんぽぽ事務局に体験談をお寄せ 下さい。よろしくお願いします。それではひとまずピルの連続企画は終了します。(さ くま)

 

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